編集部による総合ガイド
猫伝染性腹膜炎(FIP)ガイド|原因・症状・治療はどう変わったか
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、長く「発症したら助からない病気」とされてきました。しかし近年、抗ウイルス薬の登場で状況は大きく変わりつつあります。このガイドでは、FIP の正体と、World Cat News が紹介してきた治療の進歩・注意点を一本の流れにまとめました。
最終更新: 2026-06-12
FIPとは|ありふれたウイルスが、まれに牙をむく
FIP の原因は「猫コロナウイルス」です。このウイルス自体は多くの猫が持っており、通常は無症状か軽い下痢程度で済みます。ところが、ごく一部の猫の体内でウイルスが突然変異を起こすと、全身に炎症を広げる致死的な FIP を発症します。
近年の研究では、この「ありふれたウイルス」から「病気を起こすウイルス」へ変わる遺伝子レベルの変化が詳しく調べられており、なぜ一部の猫だけが発症するのかの理解が進んでいます。
症状|2つのタイプがある
FIP には大きく2つのタイプがあり、症状の出方が異なります。どちらも進行すると重篤になります。
- ウェットタイプ(滲出型):お腹や胸に液体がたまり、お腹がふくれる・呼吸が苦しくなる
- ドライタイプ(非滲出型):臓器に病変ができ、発熱・元気消失・神経症状・目の異常など多彩で、診断が難しい
- 共通して見られるサイン:原因不明の発熱が続く、食欲不振、体重減少、元気がない
治療の大転換|抗ウイルス薬という希望
FIP 治療を一変させたのが、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬です。かつては有効な治療がほとんど無く「不治の病」とされていましたが、これらの薬によって救命できるケースが報告されるようになりました。
さらに、注射だけでなく「飲み薬(経口投与)」での有効性を検証する研究も進んでいます。飲み薬は猫の負担が少なく、自宅での投与がしやすいため、治療のハードルを下げる可能性があります。
血液検査で「治療の終わり時」が見えてきた
治療をいつまで続けるかの判断も重要なテーマです。血液検査の指標を使って治療効果や終了の目安をとらえる試みが進んでおり、治療の精度を高めることが期待されています。
注意点|「治った後」も油断しない
治療が前進した一方で、注意すべき報告もあります。新薬で寛解した猫の一部に、後から別の病気(悪性リンパ腫など)が見つかった例が報告されています。これは「薬が原因」と断定されたものではありませんが、回復後も定期的な経過観察が大切であることを示しています。
また、FIP の診断・治療は専門性が高く、薬の入手・使用には注意が必要です。FIP が疑われる場合は、必ず FIP の治療経験がある獣医師に相談してください。