猫の血栓リスク、心臓スモーク前に進行
健康・医療猫の肥大型心筋症による血栓症リスクが、これまで考えられていたよりも早く進行している可能性が最新研究で示唆。心臓のスモークが見える前の早期発見が重要。
あなたの猫、もしかして?見えない血栓のリスク
「うちの子、元気そうに見えるけど、本当に健康なのかな?」と不安を感じたことはありませんか。
実は猫が気づかないうちに心臓の病気「肥大型心筋症(HCM)」を抱えていることがあります。
この病気が進行すると突然の「血栓症」を引き起こし、足の麻痺や呼吸困難、さらには命に関わる危険な状態に陥る可能性があります。
しかし、最新の研究レビューはこの血栓症のリスクがこれまで考えられていたよりも「もっと早い段階」から始まっている可能性を示唆しています。
獣医療の専門誌であるFrontiers in Veterinary Scienceに掲載されたレビュー記事によると心臓の超音波検査で確認できる「スモーク」と呼ばれる兆候が出るよりも前にすでに血栓ができやすい状態が進行していることが指摘されています。
猫の心臓病「HCM」と突然の血栓症
猫の肥大型心筋症(HCM)は心臓の壁、特に左心室の筋肉が異常に厚くなる病気です。
この状態が続くと心臓のポンプ機能が低下し、全身に血液をうまく送り出せなくなります。
HCMが進行すると「動脈血栓塞栓症(ATE)」という血栓症を引き起こしやすくなるのは心臓の中で血液の流れが滞り、血の塊(血栓)ができやすくなるためです。
この血栓が心臓から全身に送り出されて血管を詰まらせると突然の激しい痛み、後肢の麻痺、呼吸困難といった重篤な症状を引き起こすことがあります。
猫の生活の質を大きく損ない、緊急治療が必要となるケースも少なくありません。
血栓形成の3つの要因「ビルヒュルツの三徴」
血栓ができるメカニズムは主に3つの要因が重なることで起こると考えられており、これは「ビルヒュルツの三徴」と呼ばれます。
一つ目は「血管の内壁の傷つきやすさ」です。
血管の内側が何らかのダメージを受けると血液が固まりやすくなります。
二つ目は「血流の停滞」で血液の流れが遅くなったり、よどんだりすると血の塊ができやすくなるのです。
そして三つ目は「過凝固状態」、つまり血液自体が固まりやすくなる体質を指します。
HCMの猫では心臓の構造変化によって血液の流れが乱れ、心臓の内壁に炎症が起こりやすくなるため、これらの三徴が活性化し、血栓ができやすい状態が作られてしまいます。
「スモーク」より早く?見えない血栓リスクの兆候
これまでの血栓リスク評価では「スモーク」と呼ばれる心臓超音波検査での所見が重要視されてきました。
これは「自発的エコー造影(SEC)」とも呼ばれ、心臓内の血流が非常にゆっくりになり、血液中に微細な粒子が確認される現象で血流の停滞を示すサインです。
しかし、今回のレビュー研究が示唆するのはこのSECが確認されるよりも「かなり前」の段階ですでにビルヒュルツの三徴の初期段階が活性化している可能性です。
具体的には心臓の構造変化、特に血液が最初に流れ込む「左心房」の拡大や、血液を固める働きを持つ「血小板」の活性化、体内の慢性的な炎症などがSECが見える前から血栓リスクを高める要因として挙げられています。
日本の猫たちのために:早期発見への期待と課題
この新しい知見は日本の猫の飼い主にとっても非常に重要な意味を持ちます。
日本では完全室内飼いの猫が主流であり、高齢化も進んでいるため、潜在的なHCMの猫が多い可能性があります。
現状ではHCMの早期診断は心臓超音波検査が中心ですが血栓リスクの早期兆候は捉えにくいのが実情です。
今回の研究はSECが見える前の段階で血栓リスクを評価できる「新しいバイオマーカー」、つまり血液検査などで早期にリスクを察知できる指標の開発が重要であることを示唆しています。
これにより、将来的にはより早期に治療や予防を開始できる可能性が生まれ、多くの猫の命を救えるようになるかもしれません。
まだ研究段階にあり、具体的な検査法が確立されているわけではありませんが今後の獣医療の進歩に期待が寄せられています。
あなたの猫の未来のために今できること
現在の飼い主ができることとしてやはりHCMの早期発見の重要性を改めて認識することが大切です。
特に7歳以上の猫では定期的な健康診断で獣医師による聴診を受け、心臓に異常が疑われる場合は血液検査や心臓超音波検査を検討することが勧められます。
また、普段より呼吸が速い、元気がない、食欲不振あるいは足を引きずるなどの異変に気づいたら早期に獣医師に相談しましょう。
今回のレビュー記事が示唆する「ビルヒュルツの三徴の初期活性化」という知見は将来的に猫の肥大型心筋症による血栓症を未然に防ぎ、愛猫のQOL(生活の質)を高めるための大きな一歩となるでしょう。
原典
Frontiers in Veterinary Science: https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2026.1870206
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